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カリカリ落とし 水垢落としヘラ [M便 1/8]

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使用する箇所の判断をお願いいたします。


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カリカリ落とし 水垢落としヘラ [M便 1/8]

レビューを見て購入しましたが、頑固な塊っぽいのがカリカリしただけで、ポロリととれました! 今までの苦労はなんだったの?という感じです。 キズをつけると大変なので、丁寧にカリカリするのがコツです。
人工大理石のシンクのガリガリ着色汚れをカリカリしました。 力加減に慣れてくると、みるみるキレイになり感激しました。 お風呂場のカランもみるみるキレイに!優れものです。
非常によい商品です。 よく落ちます。 浴室、トイレに使いました。 細いので広い面積は手間がかかりますが、コツコツやれば本当に綺麗になります。 カランなどに傷がつくこともありませんでした。
早速の対応と配送、ありがとうございました。 商品の内容を確認して直ぐ注文しました。届いたその日早速試してみました。思っていたとおりでした。頑固な汚れも取れました。蛇口がピカピカになりました。 ショップのスタッフの方々、ありがとうございました

2022年5月27日金曜日

コナン・ドイル作「空き家の冒険」<小説版>(The Empty House by Conan Doyle ) - その1

英国で出版された「ストランドマガジン」
1903年10月号に掲載された挿絵(その1) -
ある晩、ハイドパークへの散策に出かけたジョン・H・ワトスンは、
メイヌース伯爵の次男である青年貴族ロナルド・アデアが
殺害された事件現場(パークレーン427番地)に立ち寄った際、
人混みの中で、本蒐集家と思われる背中が曲がった老人に
うっかりぶつかってしまい、
老人が持っていた本を数冊地面に落としてしまった。

挿絵:シドニー・エドワード・パジェット

(Sydney Edward Paget 1860年 - 1908年)


英国の作家であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)が2022年に発表した「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐(The further adventures of Sherlock Holmes / Revenge from the Grave → 2022年5月4日 / 5月14日 / 5月24日付ブログで紹介済)」では、元々、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「空家の冒険(The Empty House)」直後の話が展開する。


「空家の冒険」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、25番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(Strand Magazine)」の1903年10月号に、また、米国では、「コリアーズ ウィークリー(Collier’s Weekly)」の1903年9月26日号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第3短編集である「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」(1905年)に収録された。


「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」において、1891年5月4日、シャーロック・ホームズが、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)と一緒に、スイスにあるライヘンバッハの滝壺(Reichenbach Falls)にその姿を消してから、既に約3年が経過していた。ホームズの親友で、相棒でもあったジョン・H・ワトスンは、ホームズが居ない孤独な生活を送っていた。

コナン・ドイル作「空き家の冒険」は、そこから始まる。


1894年の春、メイヌース伯爵(Earkl of Maynooth)の次男である青年貴族ロナルド・アデア(Ronald Adair)が、パークレーン427番地(427 Park Lane → 2015年6月27日付ブログで紹介済)の自宅において、殺害された事件のニュースで、ロンドンは大騒ぎだった。


ロナルド・アデアは、カード賭博が大好きで、頻繁にクラブでカード賭博に興じていた。

1894年3月30日の夜、彼は、クラブから帰宅した後、拳銃で頭を撃ち抜かれて死んでいるのを、家族(母親)に発見されたのである。彼は、カード賭博での勝敗計算をしていた最中に、頭を撃たれたものと思われた。

事件当夜、彼の母親と妹は、外出中で、帰宅した後、母親が彼の部屋へ行ったところ、彼の部屋の扉は内側から鍵がかけられた上、いくらノックしても、返事がないため、使用人達の助けを借りて、扉を打ち破って、彼の部屋に入ったところ、彼の射殺死体を発見した訳である。

彼がクラブから帰宅したのは、午後10時で、彼の母親と妹が外出から帰宅したのが、午後11時20分だったため、犯行は、午後10時と午後11時20分の間でに行われたものと推察された。

驚くことに、内側から扉に鍵がかけられていた彼の部屋の内には、拳銃の類いは発見されなかった。また、彼の部屋は、パークレーン(Park Lane)に面した second floor(日本で言うところの3階)にあり、部屋の窓は開いていたものの、外部から何者かが侵入した痕跡は、全く見つからなかった。更に、部屋の外からの狙撃だとすると、犯人は相当な達人であることになるが、犯行時刻と思われる午後10時と午後11時20分の間、使用人達は、銃声を誰も聞いていなかったのである。


警察の捜査では、事件の動機や犯人の見当は、一切つかないままであった。ワトスン自身も、ホームズの推理方法を模倣して、事件の真相を考えてみたが、謎は全く解けなかった。


ある晩、ケンジントン地区(Kensington)の自宅からハイドパーク(Hyde Park → 2015年3月14日付ブログで紹介済)へ散策に出かけたワトスンは、そのついでに事件現場に立ち寄った。

人混みの中で、ワトスンは、本蒐集家と思われる背中の曲がった老人にうっかりぶつかってしまい、老人が持っていた本を数冊地面に落としてしまった。落としてしまった本を拾い上げて、ぶつかったことを謝ろうとしたワトスンであったが、老人は、不服そうな声を上げ、背を向けると、野次馬の中に姿を消してしまう。


1903年10月号に掲載された挿絵(その2) -
本蒐集家の老人に言われて、書棚を振り返り、
本の隙間を確認して、再度老人に視線を戻したワトスンは、
スイスのライヘンバッハの滝で亡くなった筈のホームズの姿を
そこに見て、びっくり仰天してしまったのである。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(1860年 - 1908年)


残念ながら、何の成果もなく、ケンジントンの自宅へと戻ったワトスンの元を、先程パークレーンでぶつかった本蒐集家の老人が訪ねて来た。

訪ねて来た老人は、先程の非礼を詫びるとともに、「自分は、近所の本屋である。」と自己紹介した。そして、老人は、ワトスンの背後にある書棚に空きがあるからと言って、手持ちの本数冊の購入を進めてきた。老人にそう言われて、ワトスンが、書棚を振り返り、本の隙間を確認して、再度老人に視線を戻したところ、そこには、約3年前、モリアーティー教授と一緒に、スイスのライヘンバッハの滝で亡くなった筈のホームズが、笑顔で立っていたのである。

ホームズを見たワトスンは、すっかりと仰天してしまい、椅子から立ち上がると、ホームズを数秒間見つめた後、「生涯において、最初で最後の」気絶をしてしまった。(then it appears that I must have fainted for the first and the last time in my life.)


2022年5月26日木曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 死者の書」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Scroll of the Dead by David Stuart Davies) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2009年に出版された
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 死者の書」の表紙


「死者の書(The Scroll of the Dead)」は、英国の作家であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)が、Titan Publishing Group Ltd. から、「シャーロック・ホームズの更なる冒険(The further adventures of Sherlock Holmes)」シリーズの一つとして、2009年に発表した作品である。

作者のデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズは、英語の教師を経て、フルタイムの編集者、作家かつ劇作家に転身している。


デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズは、ホームズシリーズとして、2004年に「欺かれた探偵(The Veiled Detective → 2021年4月21日 / 4月28日 / 5月5日付ブログで紹介済)」を、2014年に「悪魔との契約(The Devil’s Promise → 2022年3月5日 / 3月12日 / 3月19日付ブログで紹介済)」を、更に、2022年に「墓場からの復讐」(Revenge from the Grave → 2022年5月4日 / 5月14日 / 5月24日付ブログで紹介済) を発表している。


「死者の書」の場合、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」、3年間に及ぶ海外放浪、そして、「空き家の冒険(The Empty House)」を経て、シャーロック・ホームズがロンドンに帰還した1894年の春から1年が経過した1895年5月初旬から、話が始まる。


午後一杯、クラブで友人とビリヤードをして負け続けたジョン・H・ワトスンが、晩にベーカーストリート221B(221B Baker Street)に戻ると、ホームズに「今晩、ケンジントン地区(Kensington)で死者と交信する降霊会があるが、一緒に来ないか?」と誘われる。

ホームズによると、ロバート・ハイザ卿(Sir Robert Hythe)が、最近、ボートの事故で子息のナイジェル(Nigel)を亡くしており、霊媒師を名乗るユーリア・ホークショー(Uriah Hawkshaw)が、ロバート・ハイザ卿に対して、「死後の世界に居る御子息と交信することができる。」と接触してきた、とのこと。

ユーリア・ホークショーをイカサマ師と見抜いたマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)は、友人で、かつ、英国政府の重要機密に通じているロバート・ハイザ卿のことを心配して、弟のシャーロック・ホームズに対して、事態の収拾を頼んできたのであった。


マイクロフト・ホームズの依頼に応じて、シャーロック・ホームズとワトスンの二人は、ケンジントン地区にあるユーリア・ホークショー宅「Frontier Lodge」に、馬車で乗り付ける。

シャーロック・ホームズは、アンブローズ・トレローニー(Ambrose Trelawney)という偽名を用い、ワトスンを自分の従者ハミッシュ(Hamish)として、ユーリア・ホークショー(50歳代)に紹介する。ロバート・ハイザ卿は、既に到着しているようだった。


降霊会には、以下の人物が参加した。

(1)ユーリア・ホークショー

(2)ホークショー夫人(Mrs. Hawkshaw)

(3)ロバート・ハイザ卿

(4)シャーロック・ホームズ(アンブローズ・トレローニー)

(5)ジョン・H・ワトスン(ハミッシュ)

(6)セバスチャン・メルモス(Sebastian Melmoth - 20歳代)


ユーリア・ホークショーは、ロバート・ハイザ卿の亡くなった子息であるナイジェルを呼び出すが、シャーロック・ホームズは、ユーリア・ホークショーのイカサマを見破って、騙されそうになったロバート・ハイザ卿を救い出した。


それから1週間後の深夜、セバスチャン・メルモスが、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪れる。

彼は、ホームズに対して、「自分は、死後の世界(The life beyond living) / 不死(immortality)を研究している。自分は、死が最終だとは思っていない。(I don’t believe death is the end.)」という謎の言葉を残すと、ベーカーストリート221Bを後にするのであった。


2022年5月25日水曜日

マイケル・ギルバート作「殺されたスモールボーン氏」(Smallbone Decreased by Michael Gilbert)

英国の英国図書館から2019年に出版された
マイケル・ギルバート作「殺されたスモールボーン氏」の表紙
(Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library)


英国の推理作家であるマイケル・フランシス・ギルバート(Michael Francis Gilbert:1912年ー2006年)は、リンカーンシャー州(Lincolnshire)出身で、ロンドン大学(London University)において、法学を専攻した。彼は、一時的に、教師として働いた後、1947年にリンカーンズ・イン・フィールズ(Lincoln’s Inn Fileds → 2016年7月3日付ブログで紹介済)にある法律事務所(Trower, Still and Keeling)に勤め始め、1953年には当該法律事務所の共同経営者(partner)となり、1983年に引退するまで、弁護士として働いた。

彼は、弁護士として働く一方、推理作家として、長編30作や短編185作を発表するとともに、ラジオ、TV や舞台等用の作品も手掛けている。また、彼は、英国の推理作家協会(Crime Writers’ Association)の創設メンバーの一人でもある。


英国の英国図書館から2019年に出版された
マイケル・ギルバート作「殺されたスモールボーン氏」の裏表紙
(Front cover : NRM / Pictorial Collection / Science Picture Library)


 「殺されたスモールボーン氏(Smallbone Decreased)」は、マイケル・ギルバートが1950年に発表した4作目の長編で、それまでの長編3作と同様に、スコットランドヤードのヘーゼルリッグ主任警部(Chief Inspector Hazelrigg)が探偵役を務める。


リンカーンズ・イン・フィールズに所在する有名な弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」の創設メンバーの一人で、共同経営者でもあるアベル・ホーニマン(Mr. Abel Horniman)が亡くなり、彼の息子であるボブ・ホーニマン(Mr. Bob Horniman)が跡を継ぐことになった。

アベル・ホーニマンからボブ・ホーニマンへの引継作業の過程で、オフィス内にある巨大な書類保管金庫(large deed box)が開けられた。すると、開封された書類保管金庫の中から、男性の死体が転がり出た。なんと、その死体は、亡くなったアベル・ホーニマンと一緒に、「Ichabod Trust」という信託基金を運営していたマルカス・スモールボーン氏(Mr Marcus Smallbone)だったのである。


当初、信託基金を不当に運用して、それを不法に懐に入れていたアベル・ホーニマンが、それを見つけたマルカス・スモールボーン氏を殺害の上、自分のオフィス内の書類保管金庫に隠していたものと思われたが、その後、秘書の一人であるシシー・チタリング(Miss Cissie Chittering - 共同経営者の一人であるバーリー氏の秘書)が、休日の弁護士事務所内において、絞殺されるに及び、疑惑の目は、弁護士事務所の経営者やスタッフに向けられることになった。


本作品「殺されたスモールボーン氏」の舞台となる
弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」のオフィスレイアウト図

主要な容疑者は、以下の通り。

(1)ボブ・ホーニマン(アベル・ホーニマンの息子である弁護士で、新しい共同経営者)

(2)バーリー氏(Mr. Birley - 共同経営者の一人)

(3)トリストラム・クレイン(Mr. Tristram Craine - 共同経営者の一人)

(4)エリック・デュクフォード(Mr. Eric Duxford - 弁護士)

(5)ジョン・コーブ(Mr. John Cove - 見習い弁護士)

(6)エリザベス・コーネル(Miss Elizabeth Cornel - アベル・ホーニマンの秘書で、彼の死後、ボブ・ホーニマンの秘書)

(7)アン・ミッドメイ(Miss Anne Midmay - トリストラム・クレインの秘書)

(8)フローリー・ベルバス(Miss Florrie Bellbas - エリック・デュクフォードとジョン・コーブの秘書)

(9)ポーター夫人(Mrs. Porter - 秘書)

(10)チャーリー・コッカーリル(Sergeant Charlie Cockerill - 事務員 / 記録係)


弁護士事務所「ホーニマン、バーリー&クレイン」に新たに入った弁護士で、素人探偵であるヘンリー・ボーン(Henry Bohun)の手助けを受けて、スコットランドヤードのヘーゼルリッグ主任警部が、マルカス・スモールボーン氏と秘書のシシー・チタリングの2人を殺害した真犯人を捕まえるべく、捜査を進めていく。


本作品「殺されたスモールボーン氏」は、1950年に発表された以降、特に顧みられていなかったが、2019年に大英図書館(British Library → 2014年5月31日付ブログで紹介済)から再出版されている。 


2022年5月24日火曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」(The further adventures of Sherlock Holmes / Revenge from the Grave by David Stuart Davies) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2022年に出版された
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 墓場からの復讐」の表紙


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆(4.0)


1891年5月4日、シャーロック・ホームズと彼の宿敵で、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of Crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の2人は、スイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)にその姿を消して、彼らは死亡したものと思われていたが、3年後の1894年5月、ホームズは、無事にロンドンへと帰還し、「空き家の冒険(The Empty House)」事件において、ジョン・H・ワトスンやスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)と協力の上、モリアーティー教授の片腕であるセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)の捕縛に成功した。

ところが、その翌日の夜、何者かの手助けにより、折角、捕縛したモラン大佐が、スコットランドヤードの牢屋から逃亡してしまう。それに続いて、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物が、モリアーティー教授が残した組織を再興するとともに、亡くなったモリアーティー教授のため、シャーロック・ホームズへの復讐に着手する。やがて、その魔の手は、兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)にまで及ぶ。

作者であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies:1946年ー)が2022年に発表した本作品では、「最後の事件」/「空き家の冒険」に続くシャーロック・ホームズ対モリアーティー教授の後継者と名乗る人物との戦いが展開する。


(2)物語の展開について ☆☆☆半(3.5)


モリアーティー教授の後継者と名乗る人物は、モリアーティー教授の復讐のため、シャーロック・ホームズの命を奪うべく、次々といろいろな罠を仕掛けてくる。シャーロック・ホームズは、教会の爆破に巻き込まれるものの、辛くも、助かるが、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物を捕まえるべく、ワトスン / マイクロフト・ホームズ / スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)と連携の上、自らを「死亡」扱いにする。ここまでは、物語の前半部分である。

シャーロック・ホームズへの復讐に成功したと思ったモリアーティー教授の後継者と名乗る人物は、次のステップとして、モリアーティー教授が残した組織を再興すべく、銀行の金庫から、英国王室 / 英国政府がフランス政府から一時的に預かったあるものを盗む計画に着手するのであるが、シャーロック・ホームズは、ある人物に変装の上、この計画の遂行を阻止するとともに、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物を捉えようとする。この話が、物語の後半部分で展開する。

物語の前半部分は、展開がスピーディーで、なかなか面白いが、後半部分に入ると、物語の性格上、じっくりと話を進めざるを得ないことは判るものの、急に話が停滞してしまったように感じてしまうのが、やや難点である。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆(3.0)


モリアーティー教授の後継者と名乗る人物は、モリアーティー教授の復讐のため、シャーロック・ホームズの命を奪うべく、次々といろいろな罠を仕掛けてくるが、その罠には、ある程度まで自分の正体に迫れるような手掛かりを残していく。ホームズは、それらの手掛かりを辿るものの、必ず、途中で断ち切れしまう。そういった意味では、物語の前半部分においては、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物の方が、ホームズよりも、頭脳戦では、優位である。ホームズ側は、どうしても、受け身になる関係上、仕方がないのであるが、個人的には、ホームズに、もう少し頑張ってほしかった。

物語の後半部分で、逆に、ホームズは、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物を罠にはめようとするが、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物は、ホームズによる罠とある程度判った上で、計画を進めているところがあり、ここでも、残念ながら、ホームズは、優位に立てていない。

ワトスンの場合、本作品では、完全に物語の記録者に徹していて(厳密に言うと、物語の全てが、ワトスンによる記録ではなく、特に、物語の後半部分は、3人称による記述が多く展開する)、大きな活躍はできていない。


(4)総合評価 ☆☆☆半(3.5)


作者であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズによる作品は、基本的に、どれも非常に読みやすく、話の展開も面白い。

本作品に関して言うと、どうしても、受け身になるという点を差し引いたとしても、物語全体を通じて、ホームズは、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物に対して、頭脳戦で優位に立てていないのは、少々不満が残る。


物語の冒頭において、パリにおいて、強盗、脅迫や殺人等を実行する、小規模ながらも非常に有能な犯罪集団を組織するデファージュ夫人(Madame Defarge)なる人物が出てくるが、彼女が物語にどのように関わってくるのか、また、モリアーティー教授の後継者と名乗る人物とは、一体、何者かなのかという点について、作者であるデイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズには、隠す意図はあまりなかったのかもしれないが、慣れた読者であれば、物語の前半部分のかなり早い段階で、その正体が直ぐに判ってしまう。個人的には、その正体について、もう少し、あるいは、最後の方まで引っ張った方が良かったのではないかと思う。


2022年5月23日月曜日

イーデン・フィルポッツ作「闇からの声」(A Voice from the Dark by Eden Phillpotts) - その1

東京創元社から、創元推理文庫として出版されている
イーデン・フィルポッツ作「闇からの声」(新カバー版)の表紙
       カバーイラスト: 松本 圭以子 氏
カバーデザイン: 中村 聡 氏

「闇からの声(A Voice from the Dark)」は、主にデヴォン州(Devon)を舞台にした田園小説、戯曲や詩作で既に名を成した英国の作家であるイーデン・ヘンリー・フィルポッツ(Eden Henry Phillpotts:1862年ー1960年 → 2022年2月6日 / 2月13日付ブログで紹介済)が1925年に発表した推理小説である。


旧領主邸(Old Manor House)ホテルは、英国海峡を望む英国南部のドーセット州(Dorset)南端にあるポートランド岬の断崖の上に、ぽつりと建っていた。ホテルの周囲は、吹きさらしの荒涼とした地帯で、狩猟客や近在の馴染み客のおかげで、経営が成り立っていた。


ある年の11月の晩、一台の自動車がホテルの玄関前に横付けになり、一人の旅行客が石畳のポーチの上に降り立った。彼は、引退した名刑事のジョン・リングローズ(John Ringrose:55歳)だった。ジョン・リングローズは、ホテルの主人であるジェーコブ・ブレントの出迎えを受ける。


主人のジェーコブ・ブレントは、妻に先立たれており、一人息子が居た。その一人息子が、ヨーヴィルに私営銀行に勤めていたのだが、二人組の悪人に利用されて、昨年、無実の罪で告発されたのである。ジョン・リングローズが、ジェーコブ・ブレントの一人息子の完全無罪を立証の上、二人組の悪人を刑に服させた。父親であるジェーコブ・ブレントは、感謝等という言葉では表せない程に嬉しがり、ジョン・リングローズに対して、いつでも好きなだけホテルに逗留してほしいと、ずっと前から申し出ていたのである。


刑事から引退したジョン・リングローズは、総監のジェイムズ・リッジウェイ卿の勧めもあり、刑事生活の回想録を執筆するべく、今回、ジェーコブ・ブレントの招待を受けて、旧領主邸ホテルへとやって来たのである。

ジェーコブ・ブレントによると、ジョン・リングローズの他には、ベレアズ夫人(84歳)と付添いのスーザン・マンリイの長逗留の客が居るだけだった。ベレアズ夫人は、50年前頃に、旧領主邸ホテルにおいて蜜月を過ごしたことがあり、ここが気に入ったため、最初は数週間の予定で保養にきたのだが、結局のところ、ここで余生を過ごすことに決めた、とのこと。

夕食の際、ジョン・リングローズは、ベレアズ夫人と顔を会わせた。ベレアズ夫人は、中風のため、脚が麻痺していて、人前では車椅子をかかせなかったが、暖かみのある朗らかな人柄で、頭もよく、世事にも広く通じていた。


夕食後、サロンにおいて、ベレアズ夫人と1時間ばかり話をしてから、バーにおいて、寝酒の水割りウイスキーを飲むと、ジョン・リングローズは、早めに寝室へと引き上げた。彼は、堅いベッドでないと、気持ちよく眠れないたちだったが、羽毛布団の中に潜り込むと、直ぐに眠り込み、熟睡した。


その夜中(午前3時)、彼の耳に、闇をつん裂くような幼児の悲鳴、恐怖のドン底に慄く、いたいけな叫び声が聞こえてきたのである。

「お願いーお願いーいい子になるからーいい子になるからーねえ、ビットンさん!そいつに僕を見させないーそばへ来させないでーお願いーお願いだから!」(創元推理文庫 橋本 福夫 氏 訳)


すっかりと眠気が吹っ飛んでしまったジョン・リングローズは、ベッド横の壁のボタンを押して、電灯を点けたが、彼の部屋の中には、誰も居なかった。その後、彼は、戸口へと向かい、ドアを開けてみたが、外の廊下にも、人影は全く見当たらなかった。更に、彼は窓へ駆け寄ったが、カーテンはひいたままの上、窓の掛け金もかかったままだった。小さい子供であっても、身をひそめらるのが難しい吊り箪笥の中も調べたが、そこには彼の衣類が入っているだけで、室内には、隠れ場所はどこにもなかったのである。


ジョン・リングローズが聞いた幼児の悲鳴 / 叫び声は、一体、なんだったのだろうか?


2022年5月22日日曜日

ボニー・マクバード作「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒」(A Sherlock Holmes Adventure / Unquiet Spirits by Bonnie MacBird) - その1

英国の HarperCollinsPublishers 社から
Collins Crime Club シリーズの1冊として
2018年に出版されたボニー・マクバード作
「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒」(ペーパーバック版)の表紙
Cover Design : HarperCollinsPublishers Ltd.
Cover Images (Figures) : Bonnie MacBird
Cover Images (Map) : Antiqua Print Gallery / Alamy Stock Photo
Cover Images (Textures) : Shutterstock.com


本作品「シャーロック・ホームズの冒険 / 不穏な蒸留酒(A Sherlock Holmes Adventure / Unquiet Spirits)」は、米国の小説家であるボニー・マクバード(Bonnie MacBird)が2017年に発表したものである。


サンフランシスコ(San Francisco)出身のボニー・マクバードは、スタンフォード大学(Stanford University)において、音楽の学士号と映画の修士号を取得した後、ハリウッド(Hollywood)において、脚本家およびプロデューサーとして、長らく活躍し、エミー賞(Emmy Awards)を3回、そしてmCine Golden Eagles 賞を11回受賞。また、彼女は、SF 映画「トロン(TRON)」(1982年)の原案・原作者としても知られている。

なお、本作品は、小説家としての処女作に該る「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood → 2022年4月17日 / 4月23日 / 4月30日付ブログで紹介済)」(2015年)に続く第2作目である。


1889年の冬、ジョン・H・ワトスンは、1年前に起きた「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」事件を反芻して、遭遇した超自然現象のことを考えていた。


その年の12月、イスラ・マクラーレン(Isla McLaren)と名乗る28歳位の女性が、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のシャーロック・ホームズの元を訪れた。


彼女の義理の父であるサー・ロバート・マクラーレン(Sir Robert McLaren)は、スコットランド(Scotland)のハイランド(Highland - スコットランド北部にある地方行政区画)に所在するブレーデルン城(Braedern Castle)を所有する大地主で、ウイスキー蒸留所を経営する大実業家であるとともに、英国議会(保守党)のメンバーでもあった。

サー・ロバート・マクラーレンには、3人の息子が居たが、

(1)長男:ドナル(Donal) - 3年前に戦地で死亡

(2)次男:チャールズ(Charles) - キャサリン(Catherine)と結婚

(3)三男:アリステア(Alistair) - イスラと結婚

という状況で、次男のチャールズと三男のアリステアが、ウイスキー蒸留所の運営をサポートしていた。


イスラ・マクラーレンによると、彼女達が居住するブレーデルン城には、サー・ロバート・マクラーレンの亡くなった妻であるレディーマクラーレン(Lady McLaren)の幽霊が出没するとのことだったが、幽霊等の超自然現象を信じないホームズは、それを一笑するのであった。


イスラ・マクラーレンの話は、更に続く。

先週の金曜日、メイドのフィオナ・ペイズリー(Fiona Paisley)が、急に城から姿を消したのである。台所の裏手にある庭において、彼女の靴が見つかったが、彼女の行方は杳として知れなかった。

ところが、その2日後(今から3日前)、彼女は、突然、姿を現したが、何故か、腰まで届く長い赤髪がバッサリと切られていたのである。それに加えて、行方不明だった2日間、自分がどこに居たのか、彼女は話そうとはしなかった。

その後、フィオナ・ペイズリーは、ブレーデルン城の管理人であるウーラン・モレイ(Ualan Moray)の長男であるイアン(Iain)とともに、またもや姿を消して、彼らは行方不明となっていた。


イスラ・マクラーレンは、メイドのフィオナ・ペイズリーが一旦行方不明となったものの、その2日後に戻って来た事情、そして、その後、イアン・モレイを連れて、再度、行方が知れなくなった事情の詳細を調べてほしいと、ホームズに依頼する。ところが、不思議なことに、彼女の訪問当初から、何が気に入らないのか、不機嫌な態度を貫いていたホームズは、彼女の依頼をアッサリと拒絶するのであった。


これは、あくまでも、筆者の推測であるが、タイトルの「Unquiet Spirits」は、「不穏な蒸留酒」と言う意味の他に、「騒がしい幽霊」と言う二重の意味を兼ねているのではないかと思う。


2022年5月21日土曜日

グラフィックノベル「シャーロック・ホームズ 犯罪通り」(Sherlock Holmes Crime Alleys) - その2

米国の Dark Horse Books 社から2016年に出版された
「シャーロック・ホームズ 犯罪通り」の英語訳版の裏表紙


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆半(2.5)


本作品(グラフィックノベル)は、「緋色の研究(A Study in Scarlet)」事件を通して、ジョン・H・ワトスンがシャーロック・ホームズと出会う以前の「語られなかった事件」となる。それに加えて、その後、長年の宿敵となるジェイムズ・モリアーティー(James Moriarty)に、ホームズが初めて邂逅する事件でもあって、意義が深い。

ただ、一方で、ジェイムズ・モリアーティーの父親であるヘンリー・モリアーティー(Henry Moriarty)がロンドンの裏社会を完全に掌握しているように見受けられるが、ジェイムズ・モリアーティーの場合、今一つ詰めが甘く、その器ではないように感じられてしまう。コナン・ドイル作「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」において、ホームズは、ジェイムズ・モリアーティーについて、「彼の経歴は驚くべきものだ。彼は良い家の生まれで、素晴らしい教育を受けている上に、並外れた数学的な才能にも恵まれているんだ。21歳の時に、彼は二項定理に関する論文を書いて、ヨーロッパ中で大評判を得たのさ。その功績が認められて、彼は大学の数学部長の座を手に入れて、誰の目から見ても、彼の前には、非常に輝かしい未来が待っていたんだ。」(’His career has been an extraordinary one. He is a man of good birth and excellent education, endowed by nature with a phenomenal mathematical faculty. At the age of twenty-one he wrote a treatise upon the Binomial Theorem, which has had a European vogue. On the strength of it he won the Mathematical Chair at one of our smaller universities, and had, to all appearance, a most brilliant career before him.’)と評しているが、本作品におけるジェイムズ・モリアーティーは、そういった人物設定にはなっておらず、単なる粗野な人物設定にとどまっている。例え、この後、かなり成長したとしても、「最後の事件」に登場したジェイムズ・モリアーティーのイメージには合致せず、その辺りがおかしい。


(2)物語の展開について ☆☆☆半(3.5)


ヘンリー / ジェイムズ・モリアーティー父子がロンドンのインテリ階級を拉致した上で行なっていた犯罪は、科学的な根拠に乏しく、やや荒唐無稽と言うか、強引な感じは否めない。例え、この頃、英国で発表された「フランケンシュタイン、或いは、現代のプロメテウス(Frankenstein; or, the Modern Prometheus. → 2021年3月24日 / 3月31日付ブログで紹介済)」(1818年)や「ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件(The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde)」(1886年)等の作品を受け入れるとしても、である。

ただし、物語は、(1)ホームズによる失踪したルームメイトのロン(Ron Jantscher)の捜索、(2)ロンドンの裏社会を牛耳るヘンリー / ジェイムズ・モリアーティー父子の確執や(3)組織を裏切ろうとした弟エメット(Emmett)を殺害された兄タイロン(Tyron)のモリアーティー父子への復讐の3つの話が緊迫したまま進み、約100ページの話を一気に読ませる勢いがある。ちょっとした短めの長編小説を読破した感じを与えてくれる。


ロンドンの裏社会を牛耳る
ヘンリー / ジェイムズ・モリアーティー父子の背後に潜む謎の人物

(3)ホームズの活躍について ☆半(1.5)


ヘンリー / ジェイムズ・モリアーティー父子の確執やタイロンの復讐等にかなり多めのページが割かれていることもあり、ホームズとしては、大した活躍をできていない。モリアーティー父子配下の者との格闘場面でのみ、ホームズはかなりの強さを見せるものの、本来の諮問探偵としての推理力を発揮するような場面がほとんど見られない。

やむを得ない状況ではあるが、途中、モリアーティー父子の囚われの身になり、タイロンによって救出されるまでの間、為す術がなかったり、また、物語の最後に起きる悲劇を阻止できなかったり、ホームズとしては、あまりピリッとしていない。


(4)総合評価 ☆☆半(2.5)


物語としては、読者をグイグイと引き寄せるが、どちらかと言うと、モリアーティー父子の確執と兄タイロンによる弟エメットの復讐が、ストーリーの主体となっていて、ホームズが(特に、本来の諮問探偵として)活躍する場面がほとんど見られず、非常に残念である。タイロンが物語の主人公になってしまっている印象が非常に強い。

また、ジェイムズ・モリアーティーの人物設定が、コナン・ドイルの原作とは合致せず、ロンドンの裏社会を掌握できるような器には、全くなっていない。


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